「もうツール・ド・フランスの季節なのか」。きっと多くの人がそう思っているに違いない。だが、安心してほしい。地球が速く回るようになったのでも、日々を生きる体感速度がスピードアップしたのでもない。昨年は2カ月遅れで行われ、今年は東京五輪の影響で前倒しで開催される。2020年の閉幕日が9月20日、そして開幕日が6月26日。1年ではなく、9カ月でツール・ド・フランスを迎えるのだ。
これまでツール・ド・フランスを沸かせてきた選手たちに、多少なりとも陰りが見えてきている。クリス・フルーム(イスラエル・スタートアップネーション)は大ケガからのリハビリ途上で5勝目は厳しい。ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)は35歳、リッチー・ポート(同)は36歳を迎えた。あのエステバン・チャベス(バイクエクスチェンジ)だって31歳なのだから、ベテランたちが「大ベテラン」になるのも頷ける。
スプリンターも、ポイント賞争いという意味ではペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)の対抗馬が増え、現実に昨年はマイヨ・ヴェールを失った。ロット・スーダルの中でエーススプリンターがジョン・デゲンコルプからカレブ・ユアンにバトンタッチしたように、プロトン全体の世代交代は確実に起きている。