タデイ・ポガチャルがパリのシャンゼリゼ大通りで黄色いジャージーを纏うならば、すなわち2010年代のツール・ド・フランスを席巻したクリス・フルームに並ぶ4勝目を手にしたことになる。フルームはその後の大けがで5勝目は手に入れられなかったが、ポガチャルは4勝目、そして5勝目に手を伸ばせるだろうか。おそらく、Yesだ。
今年のツール・ド・フランスは少なくとも4勝目を手に入れるには好都合のプロファイル。「目下の」不安はわずか二つしかない。
一つは前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)が思わぬ失速をしたこと。17.4kmの短いレースでレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)に48秒、ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク)に28秒の差を付けられた。この差はそのまま今大会第5ステージにある平坦の個人タイムトライアル(33km)に反映される可能性がある。すなわち、エヴェネプールに1分半、ヴィンゲゴーに50秒を与えるのは織り込まないといけない。
もう一つの不安は、ライバルがポガチャルの走りに慣れてきたことだ。さきのドーフィネ第6ステージでポガチャルはヴィンゲゴーに1分の差を付けたが、クイーンステージ(大会中の最難関ステージ)となった第7ステージでは14秒しかギャップを稼げなかった。ポガチャルのアタックにヴィンゲゴーは過剰な反応は示さず、淡々と登坂をこなしたのが良かったのだろう。冷静に振る舞ったほうがいいというライバルたちの対応力は、きっと今大会もポガチャルを少しは苦しめる。