5月のリーグ戦は3試合。そのほかに天皇杯予選の県決勝(第22回福岡県サッカー選手権大会決勝)が行われた。この3試合でギラヴァンツ北九州は一つも勝利を挙げられず、リーグ戦は順位表の下位のまま。天皇杯は本戦出場を逃した。
4月末から続く大型練習3連戦。その2戦目となったブラウブリッツ秋田とのゲームは、0-1で敗れた。
この試合のギラヴァンツはダヴィと池元友樹が先発し、初先発の藤原奏哉を高い位置に置く3-5-2の布陣とした。ゴールへの積極姿勢が見られる2トップが牽引する形で序盤から勇猛に攻め込み、そのダヴィや池元がシュートを放つ。だがGKの好セーブで阻まれるなど、わずかなところで決定機を逸すると、前半38分にセットプレーの跳ね返りを決められ秋田に先制点を許した。後半に入るとゲームの主導権は秋田が握るようになり、ギラヴァンツはチャンスそのものが減少。終盤はフェホ、本山雅志を投入して巻き返しを狙ったが、見せ場を作るには至らなかった。
セレッソ大阪U-23(C大23)戦からはGKを山岸範宏に変更。その他のメンバーも前節からは入れ替え、池元友樹、浦田樹、小野寺達也などがスタメンを外れ、村松大輔、前田央樹らが名を連ねた。
その村松がクロスからヘディングでシュートを狙うなど序盤こそは優勢だったが、バックパスのミスをC大23の魚里直哉に拾われると、そのままGKも交わされて前半32分に失点してしまう。
追いつきたいギラヴァンツは後半34分にフェホを投入する。フェホは長身を生かし、後半38分の右サイドからのFKに頭で合わせてゴールイン。これで同点とした。試合はそのまま終わり、1-1。引き分けに終わったが、上位を走るC大23から勝ち点1を得たこと自体はポジティブな点となった。
天皇杯予選での悔しい負けを拭い去って、ホーム・ミクスタでの初勝利を目指したギラヴァンツ。ところが、ガンバ大阪U-23(G大23)に対して手も足も出ず、0-4の惨敗を喫した。
ゲームの入りは決して悪かったわけではない。しかし、良い時間帯で決められないのが今のギラヴァンツ。高い位置で引っ掛けて、野口航や藤原奏哉がサイドから攻め込んだものの、あと一歩が遠い。枠を捉えたシュートも相手のファインセーブに阻まれ、決定機を逃してしまう。
徐々にG大23にゲームを握られるようになり、泉澤 仁にノープレッシャーのままボックス内まで持ち込まれて先制点を献上。0-1で迎えた後半も、まるで練習試合を見ているかのような、目も当てられないような失点劇が続いた。縦パスに抜け出されて妹尾直哉に決められると、高宇洋にはクロスに合わされて失点。終盤にも白井陽斗のミドル弾でネットを揺らされ、万事休す。ふがいない大敗にスタンドからは怒号も飛んだ。
5月のギラヴァンツは見るべきポイントがほとんどない。唯一とも言える収穫は、サイドアタックで何度か見せ場を作った野口航と高い位置でボールを収めて好機をうかがった藤原奏哉の二人が、試合に出て活躍しつつある点だろう。それ以外は特筆点がない。
メンバーが毎週のように入れ替わっているため、選手間の呼吸が全く合っていない。攻撃側、守備側ともにペナルティーエリア内でのクオリティーが低く、それが低い得点率とイージーミスからの失点につながっている。相手のクロスボールに対して誰もプレッシャーに行っていないのも致命的だ。
いま多くの手を打つのは難しい。ただ、メンバーの固定化を図ってあうんの呼吸が出せるようにしなければ、攻撃局面でのパスが合わないとか、マークの受け渡しがスムースに行かないなどの事象がいつまでも続くことになる。
システムで言えば3バックにも疑問符が付く。3バックにした場合は、両ウイングバックが下がってきた5バックとの併用が標準的な戦法となるが、現状は選手がそこにいるだけで相手に圧力を与えられていない。プレスを掛けないのであれば、最終ライン4枚、中盤4枚による整った網を作ったほうが効果があるだろう。
それだけでなく、攻撃時には後ろの3枚が最終ラインに張り付いたままとなるため、サイドから仕掛ける枚数が必然的に少なくなる。両サイドにスピードのある選手がいるだけに、アタックをサポートしたり、背後のケアをしたりするために、サイドバックを置いたほうが戦いやすいはず。今のギラヴァンツには4-4-2がベターチョイスと言えよう。
11節までを終えて下位に沈んでいる。昇格のためになりふり構わない策を打ち出していくか、それとも今年の昇格を諦めて土台から作り直すのか、判断をすべき時期が遠からず訪れる。チームだけでなく、クラブ全体での覚悟が問われている。