ギラヴァンツ北九州にとって激動の6月となった。第12節の富山戦でもその前の試合(G大23戦、0-4)の修正ができないまま0-3で惨敗を喫して手最下位に転落。その後も連敗が続き、月の半ばで森下仁之監督が解任となった。新監督として迎え入れたのは闘将として知られる柱谷哲二氏。メンタル面からの立て直しを図り、就任後は1勝1分で推移した。
前節は0-4と大敗を喫したギラヴァンツだったが、ゲームの入りは悪い流れは引きずらずにボールをキープする。しかし、いい流れの中にありながら、先制点を決めたのは富山だった。前半26分、富山は左からのCKのチャンスを得ると、差波優人が巻いて落ちるような弾道のキック。これがGKの頭上を越えてファーサイドネット側に落ちてゴールイン。鮮やかと言うより表現のしようがないようなCKで富山が先制、ギラヴァンツはまたしても先に失点することになった。
後半に入っても決してギラヴァンツのパフォーマンスが落ちたわけではなかったが、新井瑞希、佐々木陽次に得点を許して0-3に。ギラヴァンツは途中から前田央樹、安藤由翔などを投入して攻撃の活性化を試みたが、低い重心を上げることはできなかった。ギラヴァンツはこの試合で最下位に転落した。
連敗脱出を目指したアウェー戦となったが、結果は振るわず0-2で敗れた。
ギラヴァンツはこの試合でも勢いを持ってゲームに入っていく。藤原奏哉、野口航などが高い位置でプレッシャーを掛け、ゴール至近でもダヴィと平井将生が前を向いてプレーする。ところが、前半19分、サイドを白石智之に突破されると、短い折り返しのボールをフリーで谷口海斗に打たれて失点してしまう。
先制点を許すと立て直しができなくなる悪癖は修正できず、徐々に試合のペースは盛岡に渡ってしまう。後半の立ち上がりにも追加点を献上。ギラヴァンツは残された時間も、試合序盤のような攻勢に出ることはできず、0-2で敗れた。
ホームで未だに勝ちがなかったギラヴァンツ。今シーズンのホーム初勝利と4月14日以来の勝利を目指してゲームに臨んだ。チームとしての気迫は十分にあり、前節同様に高い位置で引っ掛けて前向きに攻撃していく。
前半37分には右からのCKを起点に、ゴール前でのスクランブルからダヴィが先制点を奪取。ついにギラヴァンツが1点のリードを獲得する。このゴールは5月6日のC大23戦以来、4試合ぶり、実に314分ぶりの得点となった。
ところが、ゲームを優位に進めていたはずのギラヴァンツだったが、前半アディショナルタイム、クリアボールから攻め込まれるとクロスを奥田晃也にしずめられて失点。後半にもあっさりと連続失点を許して1-3となる。試合終盤、前線まで入り込んだ村松大輔が右のクロスからヘディングシュートを決め、今季初ゴール。これで1点を返すが、反撃の開始が遅く2-3で敗れた。
この試合結果を受けて、翌17日までに森下仁之監督の解任が決まった。
柱谷哲二監督が就任して間もなくの試合。実質的な練習期間は3日という短さで臨んだが、柱谷監督は短期間ながらシステムを組み替え、4-4-2に変更。左利きの安藤由翔は右サイドハーフで出場した。
攻守にわたって自分たちからアクションを起こすことを宣言し、実際にそのようなゲームの内容となる。
序盤から敵陣に攻め込んだギラヴァンツは、野口航のクロスにダヴィがヘディングで飛び込んだり、カットインした安藤が左足でミドルシュートを放ったりとゴールを脅かす。ピンボール状態の混戦の中から福島・田村翔太に先制を許すが、メンタル面での落ち込みはなく、その直後にダヴィが自らの突破から得たPKを決めて同点とした。
ところが、すぐにCKの折り返しから樋口寛規に押し込まれ、福島に勝ち越し点を決められてしまう。ただ後半も勢いがあったのはギラヴァンツ。後半10分、ダヴィが自陣からのロングフィードをペナルティーアーク付近で拾うと、巧みに切り替えして左足を振りゴールネットを揺らした。これがダヴィにとってはリーグ戦通算100ゴール目。試合は引き分けに終わったものの、勝ち点1を得て、連敗を4で止めた。
雷雨のためにキックオフ時間は1時間半遅くなった。ただ試合の進展には大きな影響はなく、スムースに試合は進んだ。
ギラヴァンツは前節から一人のみを入れ替え、左のハーフで川島大地が出場。この川島のほか、ギラヴァンツは引き続いて右サイドハーフでピッチに立った安藤由翔を生かして、サイドから仕掛けていく。敵陣内でボールを保持するだけでなく、クロスを何度も供給してチャンスを広げると、前半34分に池元友樹がペナルティーエリアの右端から低いシュート。これが相手に当たってコースが変わり、ゴールに吸い込まれた。その後も川島大地などが積極的にゴールを狙っていく。
後半もゲームの流れを呼び込んだのはギラヴァンツ。後半14分に池元のミドルシュートが決まって2-0とする。なおも攻勢を強めるギラヴァンツは、アディショナルタイムまでメンバーを入れ替えないまま前向きにゲームを進めていく。
後半アディショナルタイムに柱谷監督は佐藤颯汰を投入。「監督からも走れという指示は出ていた」と話した佐藤は勢いよく前線へと駆け出し、川島大地のスルーパスからJリーグ初ゴールとなる一撃。ギラヴァンツが3-0で快勝し、4月14日以来の勝利を飾った。
難しい1カ月だった。チーム状況を考えれば、森下仁之監督の解任はやむを得ないが、決して責任は指揮官だけに留まらない。夏の中断期間やシーズン終了後になっても構わないが、クラブとして問題を総括し、今後に生かすべきだろう。
その一方で、柱谷哲二監督は正攻法の選手起用やシステム採用を実行した。オーソドックスとはいえ、誰もが経験したことがある4-4-2は急な指揮官交代でも馴染みやすい。そもそも3バックに不安があったため、4バックにしたことで守備が安定しただけでなく、サイドバックが攻撃参加しやすくなった。
安藤由翔を右サイドに起用したのも興味深い。推進力があるレフティーの安藤を右に置き、カットインしてシュートまでつなげるイメージが分かりやすく共有されている。野口航も追い越していく動きも生き、右サイドでのゲーム構築は安定感が出てきた。
ゲームの構築は村松大輔が中心で、常にボールに触れている。村松も役目がはっきりし、のびのびとプレーできている印象を受ける。もっと大きな展開を作っていく必要もあるが、村松がボールを振ってサイドや2トップを生かせれば勝ち点は積み上げていけそうだ。池元友樹とダヴィの得点力も頼もしい。
もちろん指揮官は現状を「まだまだ」と話して一切の妥協を許していない。夏の中断期間を含め、どのように今後のチームを引っ張り上げるのか、手腕に期待が懸かる。