旅の目的地を自由に決めていい。そう言われたら、風光明媚な日本の中からどこを選べばいいだろう。ひなびた温泉もいいし、都会に埋もれるのもいいのかもしれない。季節を選べるならレジャーを真っ先に思い浮かべる人もいるはずだ。
私は、山陰路を目指した。
2018年12月。誰もが使うフレーズを借りれば、平成最後の師走。冬は思い出したように気温を下げ始めていた。「寒くなってきましたね」を使える時候の訪れとともに、私は3泊4日の日程で山陰を列車に乗って旅をしてきた。使った列車は合わせて23本。山陰本線を西に東に、期間限定の切符「山陰フリーパス」を効力の限りに使い切った。
新山口駅発着の特急列車で山陰本線に入り、島根県と鳥取県内のJR線が乗り放題という切符だ。当然、旅の始まりは新山口駅。8時52分に発車する「スーパーおき2号」が1本目の列車となった。