サッカーをさせてもらえなかった。福岡がクレバーだった、とも言えるだろう。想像以上のハードマークを小野瀬康介や高木大輔に向けたのではなく、大崎淳矢、山下敬大など2列目のセンターラインに強く当てた。三幸秀稔へも粘っこくくっつき、ボールは低い位置から出られないまま、簡単に失った。
福岡に献上したFKからの先制点は、鈴木惇をたたえるほかない見事なもの。これに関しては同位置でFKを与えないよう心がけるしかなかったが、失い方の悪かったレノファは繰り返してセットプレーを与えてしまう。ボールを出せずにロストし、やむを得ずファールで止める。この連続でリズムは崩れた。
打開策として前半途中から小野瀬康介と高木大輔の立ち位置を入れ替える。これは霜田正浩監督の指示ではなく選手判断でトライしたもの。ボールの動きをスムースにしようとしたが、封じられていた内側の2人の動きにくさは改善されず、結果的にシュートレンジへの進入回数は増えなかった。
後半はスタートから坪井慶介を5試合ぶりにピッチに立たせ、ヘナンを左サイドバックに移動。ウイングバックはキックオフ時点の状態に戻して、立て直しを図る。しかし、福岡のレノファセンターラインへの寄せは衰えず、レノファはカウンターからのチャンスがあるくらいで大勢に変化は起きない。後半13分には反復攻撃を受けて、再び鈴木惇に追加点を決められる。
レノファが流れをつかみかけたのはこの失点以降だった。相手が2点をリードしたことで、ボランチの引っかける圧力が低下。大崎淳矢が相手最終ラインと中盤4枚の間でフリーになる時間ができるようになり、後半18分にクロスバーを叩くミドルシュートを放ってゴールを脅かす。同20分には相手のペナルティーエリア内に人数が集まり、高木大輔の浮き球からヘナンがゴールを狙おうと試みた。
前後半を通じて最も良い時間を築きつつあったが、霜田正浩監督は同24分、その大崎を下げて大石治寿を投入。高木のクロスに大石が飛び込むようなシーンが見られたが、外から中へのシンプルな展開ばかりとなり、ボールを動かして崩していくというコンセプトからは離れていった。後半30分以降は福岡のペースに戻り、0-2でホイッスル。レノファは5試合ぶりの黒星を喫した。
交代に関しては得点を取りに行こうとする意思の表れではあったものの、大崎に自由が戻ってきた状態での交代は拙速かつ失策と言わねばなるまい。相手の目線を変えるという意味では、同じように動きを消されていたオナイウ阿道とスイッチするという選択肢もあったはずだ。溜めやシュートレンジに入っていく強さなどの大石の良さも生かせなかった。
福岡の仕掛けていたセカンドラインやセンターラインを封じるディフェンス。これに対する効果的な回避法を見つけなければならない。今節に限ってはオナイウも下がって受けようとしたため、自らセンターライントラップに掛かりに行ってしまった可能性もある。作戦ボードだけでサッカーができるなら、センターFWが出たり引いたりを繰り返して守備を引きつけたり、ウイングバックが中に絞って相手のマークを乱れさせたりといった手も考えられる。
いずれにしても、選手の動きを増やさなければ封じられた場所は封じられたまま。ボールを失いがちだったという点があるにしても、あまりにも運動量が少なすぎた。2点を追いかけるチームの動きではなく、それぞれのポジションの選手が、それぞれのポジションでボールに触れているに過ぎなかった。これには上述したとおり采配も大きく絡んでくるため、選手だけでなく、コーチングスタッフ陣にもこの1週間での修正が求められる。
ゴール裏サポーター数でみればレノファが多かっただけに、内容も結果もない試合を見せたという点で、チームには猛省が必要だ。緊張感を高め、やれることとやれないことを整理して次戦に臨んでほしい。勝利というものは、タフに、愚直に戦っていく者にこそ微笑むものである。