強豪との対戦が続いた4月は2勝2敗。他の上位勢も勢いが落ち着き、4月を終えた時点での順位は3位を維持した。
今シーズンが開幕するよりも前。日程が発表されたときに、4月の積み上げがゼロを覚悟した。その分だけ3月で白星を重ねることが重要と思われたが、実際には4月も大宮アルディージャとFC町田ゼルビアに勝利し、勝ち点6を上積み。その反面で、3月の勢いに対して慢心が生まれた面も否めず、アビスパ福岡とアルビレックス新潟には黒星を喫した。
4月のファーストゲームは大宮アルディージャをホームに迎えた。大宮とは初対戦。1年でのJ1再昇格を目指す大宮は長身FWのロビン・シモヴィッチが出場しなかったとはいえ、十分に力のあるマルセロ・トスカーノと大前元紀が先発し、自由に動かすとインパクトがあるマテウスもスタメンに並べた。
試合は前半2分、瀬川和樹がクロスを入れると、こぼれ球に身体能力を生かしてオナイウ阿道が先制弾。ただ、レノファは自らのパスミスなどから押し込まれCKに逃れる場面が目立った。前半は耐えたが後半25分にCKからマテウスに失点する。
ところがそのマテウスが2枚目のイエローカードで退場となるとモメンタムはレノファへと傾き、小野瀬康介が勝ち越しのミドルシュート。左足での巻いて落ちるシュートがネットを揺らし、勝利を飾った。
今シーズンのアウェーゲームの中では最も山口に近い場所(※みらスタ基準で)での開催となったアビスパ福岡戦。今後の試合でも課題となってくるが、ボールを持っている時間帯の動かし方に甘さがあり、簡単にボールを失ってしまう。前半7分に鈴木惇に直接FKを決められ早くも追いかける展開に。キッカーやターゲットマンが充実している福岡に対してなおもセットプレーのチャンスも与え続け、レノファは全く形が作れなかった。
レノファは三幸秀稔の判断で小野瀬康介と高木大輔の立ち位置を変えたり、後半もなんとか前掛かりに攻め込もうとするが、パス精度が上がらない。ほとんど何もできないまま、追加失点を許して0-2でゲームを閉じた。
相性が良くなってきている野津田(町田市立陸上競技場)に乗り込んだレノファは、池上丈二を初先発させオフェンシブハーフの役割を担わせた。この霜田采配がピタリとはまる。
前半39分、前貴之のスルーパスをペナルティーエリア内に入り込んでいた池上が中継。小野瀬康介がシュートを放つと、GKのはじいたボールに高木大輔が詰めて先制する。さらに後半25分には池上がドリブルで持ち込んでPKを誘い込んだ。このPKは小野瀬がしずめ、レノファが快勝。スタメンを射止めた池上の活躍が光り、連敗を阻止した。
天皇杯以来の対戦となった新潟戦。調子を下げていた相手の手の内が読みにくく、難しい試合になるのは織り込み済みだったが、試合内容は自滅に近かった。
この試合では大崎淳矢を起用せず、丸岡満を先発。疲労のない若い選手を使い、運動量の維持を図った。ところが、丸岡は前半の早い段階で負傷しピッチを去ることになった。
ゲーム自体も厳しく、前半16分に磯村亮太に先制点を許す。レノファは2節前の福岡戦同様にパス精度が上がらず、ハーフタイムに入るまでは中盤から全くボールが出なかった。両ウイングが生きるのは相手の運動量が落ちた後半に入ってからで、ようやくサイドからクロスも入るようになる。しかし、決定的なシーンを逃す場面が余りにも多く、後半19分に小野瀬康介がドリブルで切り開いて起死回生の一発を放った以外にゴールネットは揺れなかった。
いい時間帯で追加点を決められなかったレノファは試合最終盤にPKを献上。これを安田理大に決められて土壇場で決勝弾を被弾しホーム戦で初黒星。得点をした試合での黒星も今季初で、手痛い敗戦となった。
本稿執筆時点でちょうどヴァンフォーレ甲府に上野展裕監督の就任が決まった。このタイミングは以下のことを言及するには好機と思うので、記しておきたい。それは、パスのクオリティーやコンビネーションは、現時点では上野監督時代のほうが高いという点だ。狭いエリアでボールを動かしたり、ポジションを入れ替えながら前に進んでいったりといったオートマチックなコンビネーションはやはり目を見張るものがある。
この動き方は厳然として今のレノファにも残っている。象徴的なのは当然ながら右サイドでのゲームメークだ。三幸秀稔がボールを持っているときの、前貴之のポジショニング。あるいは前がまっすぐ縦に小野瀬康介に預け、そのあとの斜め方向へのランニングと三幸のカバー。ボールは縦と横に動くのに対して、人が斜めに動き合うようなビルドアップは上野イズムが感じられる。ここに霜田正浩監督の采配が加味され、小野瀬のドリブルはより生きるようになった。
一方で左サイドやシュート直前の最終局面では霜田監督のカラーが色濃く表れる。三幸から左サイドへの展開は、右サイドとは異なりボールが斜めに動く。ラグビーでフェーズを重ねるのに似ていて、狭い局面から斜め方向のパスで一気に打開。そこで再び詰まったとしても焦れずに動かして、もう一度斜めに送り出す。ボックス内ではオナイウ阿道や小野瀬の力を最大限に引き出してシュートを早いタイミングで打たせている。