ダヴィとフェホが新加入して巻き返しを目指した4月は、終わってみれば1勝1分2敗。対戦時点で最下位だったFC東京U-23に勝利したのみで、上向く兆しは見えなかった。何が問題だったのか。そして、局面を打破する策はあるのか。
まずは4月の試合を振り返る。
有薗真吾、川上竜、川島將の3バックで臨んだゲーム。十分に推進力を持ったメンバーを組んだが、ゲームはディフェンシブな戦いとなり、スコアが動いたのは最終盤になってからだった。
後半43分、前田央樹の速いクロスに途中投入の内藤洋平が頭で合わせ、ギラヴァンツがようやく先制する。ただ、このまま逃げ切りたかったものの、相手のアーリークロスからピンチを招いてしまう。アディショナルタイムにそのアーリークロスを起点に押し込まれると、セカンドボールからの反復攻撃を竹下玲王にしずめられ、土壇場で同点。ギラヴァンツは勝ち点3を手に仕掛けたが、するするとこぼれ落ちてしまった。
相模原戦では3月下旬からチームに合流していたダヴィが初出場、初先発。ギラヴァンツはダヴィを単なるターゲットにするのではなく、戦い方は変えずに崩してからフィニッシュを預けるという舵取りをした。ところが、前半29分に谷澤達也の突破を許して先制されると、その後も相模原にゲームを掌握される。
後半もCKの流れから失点。一度は跳ね返したものの、反復攻撃のクロスボールを梅井大輝に合わせられた。ギラヴァンツは小野寺達也と本山雅志を投入。右サイドを張った左利きの安藤由翔のスプリントも見られたが、全体の押し上げは弱く、流れを引き戻せない。さらに失点を重ねたギラヴァンツは0-4で大敗。攻守にわたって目立ったところのない惨敗だった。
東京・江東区の夢の島での開催となったFC東京U-23戦。縦の長いボールを生かして攻めてくるF東23に対して、ギラヴァンツはやや守勢に回ってしまう。高橋拓也の好セーブなどでピンチは跳ね返していくが、後半も流れは渡したまま。それでも74分、ゴールからやや離れた位置でのFKを獲得する。このチャンスに川上竜がゆるく長いボールを蹴り入れと、ダヴィが頭で合わせて先制ゴール。ゲームはいい時間帯を作れなかったものの、セットプレーで試合を動かした。
終盤もF東23の攻撃を何度も食らうことになるが、ギラヴァンツはコンディションを戻してきた福田俊介と池元友樹をピッチに立たせて対応。ダヴィの加入後初ゴールをなんとか守り抜き、ギラヴァンツがリーグ戦4試合ぶりの勝利を飾った。
ギラヴァンツで活躍してきた風間宏希、星原健太、市川恵多を擁する群馬をミクスタに迎えた一戦。前節から2週間の準備期間を挟み、メンバーも大きく入れ替えた。福田俊介が3バックの一人として先発、FWは前田央樹とダヴィの2トップに。中盤はボランチタイプの選手でそろえ、練習を含めボールが前向きに動くような改善を図った。
そのギラヴァンツがボールを高い位置で動かし、前半は安藤由翔のクロスなどを起点にチャンスを作る。ダヴィが積極的にゴール前に飛び出したほか、前田もシュートに持ち込んだ。しかし決定力を欠いて前半をスコアレスドローで折り返すと、後半は一転して群馬がゲームを支配する。後半開始早々、星原のクロスに岡田翔平が合わせてゴールイン。1点をリードした群馬の方が先手を打つ形でフレッシュな選手を投入して、主導権を保持していく。
対するギラヴァンツはフェホを入れて得点を狙うが、一度ゴールのわずか左にそれるシュートを放った以外は、川岸祐輔のハードマークを交わせなかった。結局、無得点で敗れ、ミクスタでの今季初勝利はまたしてもお預けとなった。
指揮官に就任した森下仁之監督は今年、川上竜をキャプテンに据えた。最も一般的な考え方からすえば、キャプテンというのは試合で中軸を成し、目指すサッカーをより良く体現できる選手と言える。川上は若くてハードワークができる選手だ。今年はそういう方向でチームを作るものと思われた。
3月中旬までの練習試合ではJ2山口や大学チームと対戦し、実際に川上がゲームの中心だった。アンカーやトップ下などセンターラインでボールをさばき、セットプレーでは精度高いキックで得点につなげた。川上ありきのチームという印象が色濃く、少なくともこの時点までの練習試合では「今年は違うぞ」と思わせるに十分だった。チームのハードワークするという姿勢も見られ、長いボールを入れても、2人目、3人目がしっかりと動き出し、最終局面では多くの選手がゴール近くで好位置を確保していた。
その川上がセンターバックに移動し、4月最終戦の群馬戦ではついにメンバーから外れた。同節は本山雅志がキャプテンマークを巻いてピッチへ。戦術の変容は明らかだった。
ダヴィとフェホの加入で、彼らをターゲットにするようになったのは目に見えて分かりやすいところ。ただ、より象徴的な試合はダヴィがゲームに立つ前の長野戦だ。加藤弘堅、浦田樹ら前向きのパスを出せる選手で布陣を構成したにもかかわらず、ゲームは前に行くという意欲が感じられなかった。ボールは持っていたが、持たされていたと言ってもいいだろう。内藤洋平の投入で息を吹き返したものの、1点止まり。試合最終盤にクロスから失点し、勝ち点2を失った。