2018年のすべてのゲームが終わり、レノファ山口FCは明治安田J2リーグで8位で閉幕。J2昇格以降の最高順位で締めくくった。
「悔しい8位だった」。レノファを率いる霜田正浩監督、キャプテンを務めた三幸秀稔は異口同音に語り、無念さをにじませた。
理由は明らかだ。3連勝でシーズンに入ったレノファは、前半戦は向かうところ敵なしの強さを発揮。前年20位のチームに浴びせられていた下位予想を覆し、誰もが語った霜田監督の「未知数の経験値」も跳ね返した。自動昇格圏、悪くてもプレーオフ圏内で戦い続けた。
しかし、レノファは2巡目の壁に正面から激突。小野瀬康介が移籍し、池上丈二がケガで離脱し、打つ手をほとんど失った。
それでも守備と攻撃を切り離さないサッカーを貫き通す。それが指揮官への求心力を保つ要因になり、終盤戦で立て直す遠因にもなったのだが、14戦勝ちなしはレノファのウィークポイントの存在、ともすれば下馬評で言われた現象の存在を示すことになった。
例えば前年の20位という確固たる事実は、選手層の薄さに直結した。指揮官や強化部がどれほど言葉を尽くして獲得に動こうとも、「泥船に乗るだけ」と思われたら選手の獲得は難しい。例に出すのははばかられるが、20位レノファ、21位ロアッソ熊本の間に明瞭なバジェット(予算規模)の差はなく、どちらかを選べといえばもはや賭けに近かっただろう。結果的は50パーセントの確率で片方は下位に沈んだ。順位表の下のチームは翌年も高い割合で下の方にいるものなのだ。
既存戦力と説得実って獲得できた選手でイレブンを構成した18年のレノファ。霜田監督が見込んで連れてきたオナイウ阿道や高木大輔は期待通りの活躍をする。それだけでなく、15年や16年のパスサッカーに魅力を感じてレノファ入りした選手も、霜田監督のサッカーにフィットした。すなわち三幸秀稔や前貴之、小野瀬康介、池上丈二などだ。
ただ、彼らのうちの誰かがスランプに陥ったり、移籍やケガなどで穴が開くと、20位に起因した選手層の薄さを露呈。楠本卓海や途中加入の高井和馬がピッチで結果を残せるまでに、勝ちなしの14試合という茨の道を進まねばならなかった。霜田監督にとっても初采配のJ2で、選手の成長と壁を乗り越える戦術のマッチに時間は掛かった。
来年への収穫もあった。3バックでシステムを守備的にすることで守りきれる試合があった。システムがサッカーのすべてではないとはいえ、3バックのもたらした効果は霜田監督にとっても予想以上であっただろう。レノファが攻撃的なサッカーが魅力であるだけに、守備偏重になるのは避けたいが、そういう試合や時間帯を差し込む必要があるときに、3バックは有効。それは来年の戦いにも使える手立てだ。
考えなければいけないのは戦術をどう浸透させるか。今年、確かに戦術理解度は深まったものの、人に戦術が宿っていた部分も大きい。小野瀬が移籍したあとの戦い方、後述するように前が不在の試合での戦い方は、決して洗練されたものではなかった。鹿児島ユナイテッドFCやいわきFCとの練習試合もレノファらしさに欠けた。まだまだ道のりは半ば。戦術を人から解放し、チームのものにしていく必要がある。
※レノファの詳しい年間レビューは、レノファ山口FCのシーズンブックでも記述いたします。
私自身、J2リーグの取材は9年目。担当しているチームを中心に多くの選手を見てきた。その9年間というスパンの中で考えても、彼に肩を並べられる選手は限られる。一人名前を挙げるなら、当時J2の北九州に1年だけ在籍した竹内涼に似ているかもしれない。彼は今やJ1清水に欠かせない選手になっている。
今年のレノファでMVPに値する選手は多い。卓越したパスセンスで針穴を通すようなコースにボールを出し続けた三幸秀稔も、年間22得点というゴール数を挙げたオナイウ阿道も、みなMVPの有力候補だ。彼らは通常のチームならば文句なしにMVPに選ばれただろう。